第2章 絵を描くことが嫌いになってしまった君へ

2 絵を描くことが嫌いになってしまった君へ

幼児は、クレヨンや色鉛筆で絵を自由気ままに楽しく描きます。時には床や壁にまで描いてしまい親に怒られたりしますが、大きな画面に自由に描いたときの気分は最高だったでしょう。

しかし、小学生の高学年になる頃には、多くの子供達は自分から絵を描こうとしなくなります。あれだけ楽しかったお絵かきの時間が苦痛に感じるようになるのです。そして、そのまま絵に対しての苦手意識を持ったまま成長して大人になっていきます。なぜ、急に絵を描くことを嫌いになり、苦手意識を持ってしまうのでしょう。これには理由があります。

幼い頃は、とにかくクレヨンや色鉛筆で何かが描けるだけで楽しかったし、喜びだったのです。しかし、小学生の高学年にもなれば、物を見て正確に形や色を理解する力はすでに身についています。そして目にした風景、動物、昆虫、乗り物、植物などをリアルにそっくりに描きたいという欲求が出てきます。この時期を、「絵の発達段階」では写実期と言います。しかし、リアルに描く訓練はしていませんから、当然、思ったように上手には描けません。「あれ、なんか自分の思ったように描けない」ということに気づきます。そして、自分には絵の才能が無かったのだと思うようになるのです。その結果、絵に対するコンプレックスを持つようになり、絵を描くことが嫌いになってしまうのです。

写実期に入った段階で、上手に描けない理由を説明し、上手に描くための基礎的な訓練の指導を受けることができれば、写実期コンプレックスを克服することができます。

この写実期コンプレックスは、絵に関してだけではなく、多くの分野で同じようなことがあると思います。

スポーツ漫画やアニメの主人公に憧れて、クラブチームや部活動に入ってみたが、実際にやってみたら、漫画の主人公のようには思ったように上手くできず、自分には才能が無いと早い段階であきらめてしまう。多くの子供が体験することですが、これも、写実期コンプレックスと同じパターンであり、適切な指導があれば克服可能だと思います。

もし、君が写実期コンプレックスになっていたら、それは才能が無いのではなく、上手に描くための訓練をしていなかっただけだと思ってください。 絵に関しては、年齢に関係なくいつからでも始めることができ、大人になってからでも、写実期コンプレックスの克服は可能です。また、絵は訓練をすればするほど上達し、自分らしさが表現として認められる、やってみて本当に楽しい分野です。もちろん、芸術家のレベルに達するには、その先のまた違った努力が必要になります。技術を越えて芸術性の花を咲かせるための努力については、創造性の章で説明します。

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