ひらめき創研注目アーティスト 登録番号001 「画家-寺本幸加」

ひらめき創研注目アーティスト 登録番号001 「画家-寺本幸加」

寺本幸加さんの作品との出会いは、名古屋の「ギャルリーくさ笛」で開催されていた、彼女が所属するグループ展が最初でした。その後、何度かグループ展に出品された彼女の作品を観させてもらい、その不思議な魅力に魅せられたので、勝手にひらめき創研注目アーティストに認定させてもらいました。

深い藍色の海の中に浮かぶ白く輝くクラゲ、そしてかわいい魚たち、描く対象は海の生き物です。しかし、暗い海の色がすごく良いのです。深みのあるその色合いには、静寂があり、きらきら輝く色面は宇宙空間にも通じ、描かれた海の生き物からは、生命の神秘が感じられます。

彼女は、三重県出身、名古屋芸術大学 美術学部美術学科洋画コースを卒業され、現在、中学校の美術非常勤、ギャラリーの事務をしながら、精力的に作品制作に取り組む期待の若手画家です。

海の生き物の描き方、画面の構成方法なども、グループ展の度に新たな試みに挑戦されていて、今回はどんな方法で対象を描いてくれるのか? 表現してくれるのか? DMを持ってギャラリーに入る前にワクワクさせてくれる画家の一人です。

画家も一度、自分なりの表現様式を確立してしまうと、どうしてもそのパターンの中で仕事を続けてしまい、守りの姿勢から抜け出せなくなります。そうなると、有名画家の作品であっても、期待感が持てなくなります。その恐ろしさを知るだけに、私も毎年、たとえ小さな変化でもよいので、表現方法に新たな工夫を加えるようにしています。彼女も新たな試みが創作活動には重要なことをよく理解していて、地道な挑戦を積み上げています。その姿勢が、彼女の作品に生命力を与え、観る者の心をワクワクさせてくれる要因だと私は分析しています。

そんな彼女が、人生初の個展を開催すると聞き、最終日に、三重県桑名市のGallery Misonoに行ってきました。

寺本幸加展「深海(ふかうみ)の宇宙(そら)」2023年8月15日(火)~8月20日(日) Gallery Misono

個展のタイトルが「深海(ふかうみ)の宇宙(そら)」となっていますので、やはり、彼女は深海と宇宙をシンクロさせてイメージしていたことが分かりました。

このギャラリーがある建物がまたユニークで魅力的なのです。よく古民家をリフォームしてカフェとして使う試みが各地で行われ、「ふるカフェ系 ハルさんの休日」なるTV番組まで作られるようになりました。私も好きでよく観ていますが、外見を活かしつつ、中はきれいにリフォームするのが定石です。Gallery Misonoに使われている古民家は劣化が激しく、そのままでは崩れる危険性かあるため、本来なら、家屋自体を補強するなりの修繕が必要なのですが、なんと平屋の古民家をそのまま維持するために、屋根の上に鉄骨を組み、もう一棟平屋の家を建ててしまったのです。とてもユニークな建造物が生まれました。

古民家のオーナーはお寺の和尚さんだそうです。裏の駐車場から一段高い場所が墓地だったことの理由が分かりました。そして管理を負かされている伊藤明淑さんは、韓国生まれの女性で、古民家を絵画教室・展覧会開催・画材販売・鑑賞教育の場として活用し、また画家としても活躍されています。

寺本幸加さんの初個展ですが、最終日の日曜日ということで、彼女の知り合いの人達が多く駆けつけ、会場は満員状態です。やや狭いギャラリーには、すぐには入れませんでした。外で待っていると伊藤明淑さんに声をかけていただき、隣の事務室でしばらく待たせてもらうことになりました。このときに伊藤明淑さんから古民家について解説をしていただきました。

ギャラリーに入ると、そこは小さな水族館です。平面に描かれてた海の生き物たちは今にも動き出しそうです。展示の構成は。シャチ、タコ、ウミガメなどの100号から20号サイズまでのやや大きめの作品群と、魚たちを描いた小品の作品群、そして、新作の和紙に描かれた墨絵のような金魚の作品群の3群構成で展示されていました。

どの作品も素敵なのですが、特に印象に残った作品は次の二点です。

「Deep affection (親愛)」F100 (1620×1303cm)
彼女が大学時代に未完成のままにしていた作品で、今回の個展のために特に力を入れて完成させた作品だそうです。スポットライトを浴びたように浮かび上がる、親ガメと子ガメの顔、そして体の後ろが暗い海の色に溶け込んでいく美しいグラデーション、頭と甲羅とヒレ状の手に走る白く細い線がシャープに引かれ、とても美しく記憶に残る逸品でした。

「Keep an eye (一目惚れ)」F20 (727×606cm)
画面下部にタコがアップで描かれ、右上部には魚の群れが描かれた作品です。暗い海底に潜むタコを観て、真理を求め思索に耽る宗教家か哲学者の肖像画のイメージが脳裏に浮かび、しばらく時が止まったような錯覚に陥りました。

今回の個展で、海の生き物ではない作品が二点だけ展示されていました。キリンとシマウマの頭を板材で型取った作品です。色合いは彼女のシンボルカラーの藍色のままですが、作品の題材を海の生き物以外に求めた作品として、表現の幅を広げる価値あるチャレンジだったと思います。海の色でキリンやシマウマが描かれ、小魚が泳いでいる表現もプラスされているダブルイメージも良かったです。

個展を観させていただき、ますます今後が楽しみな画家であると確信を持ちました。今後も作品だけではなく、一人の芸術家としてフォローさせていただきます。また、機会あるごとに、多くの人に紹介もさせていただきます。

https://sachika-teramoto.jimdo.com

Instagram SACHIKA_TERAMOTO

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