Track and Field 展
2009年に名古屋市の「ギャルリーくさ笛」にて、陸上競技をテーマに描いた作品のみを展示する「髙澤信俊 Track and Field 展」を開催しました。
画家の中には、動的な人物画を絵のモチーフとして描いている人が多くいます。舞妓をモチーフにしていた鬼頭鍋三郎、バレリーナやミュージカルをモチーフにしているロバート・ハインデル、競馬をモチーフにしている画家もいます。私は静的な風景画や人物画を多く描いてきましたので、一度は動的な人物画に挑戦してみたいという気持ちをずっと持ち続けていました。
高校陸上競技部の副顧問時代に、競技場での取材を許可していただいたことから、陸上競技をテーマにした絵だけの個展を企画し、約一年の準備期間を経て、個展開催となりました。
陸上競技は他のスポーツと違い、トラック種目とフィールド種目、中長距離と短距離、個人種目とリレー種目など、そのバリエーションは豊富で様々なシーンがスタジアムの中でドラマチックに展開していきます。
個展のコンセプトとして、各種目の魅力が最も際立った瞬間を絵として表現し、展示された絵により個展会場全体が競技場となり、鑑賞者に選手の躍動感や生命力が伝わる展覧会を目標にしました。
会場には、タイトル「Home straight」という100mのスタートラインから競技場を観た景色をモノトーンで描いた縦140cm 横300cm の作品を展示しました。これは、選手が観ているリアルな景色を会場の鑑賞者が共有していただくための装置として描きました。
モノトーンで描いたのは、選手の緊張感を表現したかったからです。
F10号からF50号までの油彩画16点と「Home straight」のアクリル画1点を加えた合計17点でなんとか会場の壁面を満たすことができました。
会期中に観に来てくれた高校生が、「Home straight」を前にスタート前のポーズで写真撮影しているシーンが印象的でした。
動的な人物画は、どの瞬間を切り取るのか、動きを静止画の絵画としていかに表現するのか、本当に難しいと描いてみて理解できました。一回のみの企画でしたがチャレンジしてみて有意義な経験になりました。
毎年、夏になると地区大会、県大会、東海大会、インターハイと熱いドラマが繰り広げられていることを思い出します。
陸上競技はその種目の多さから選手だけではなく、マネージャー、そして大会を運営する側のスタッフの苦労は他のスポーツと比べられない程大変です。副顧問として、合宿や大会の遠征、会場の運営に関わらせていただけたことで、裏方の苦労も含め多くを学ぶことができました。すべての陸上競技の選手と関係者の皆さんに心からエールを送りたいといつも思っています。