ひらめき創研注目アーティスト 「人形作家 田中雅子」

ひらめき創研注目アーティスト「人形作家 田中雅子」

人と人形の関わりは、人類の起源から始まっています。
古くは祈祷や祭事の重要な役割を担うものであり、遺跡からは人型の遺物が多く発掘されています。
土偶や埴輪もその類いです。

ギリシャ神話では、キプロス島の彫刻家ピュグマリオンは、自ら彫った理想の女性像ガラテアを愛するあまり、ガラテアが人間になることを神に祈り続けました。女神アフロディーテがその願いを叶え、人間となったガラテアとピュグマリオンは結ばれたという伝説が残っています。
この物語から、「心から願ったことは現実に叶う」相手も応えてくれるという現象を、心理学者のロバート・ローゼンタールは「ピグマリオン効果」と命名しました。
映画『マイ・フェア・レディ』1964年制作オードリー・ヘップバーン主演のミュージカル映画は、ヒギンズ教授が粗野な女性イライザを教育、訓練し、上流社会で通用するレディに変身させる「ピグマリオン神話」をモチーフに作られた映画です。
後に、『マイ・フェア・レディ』の現代版として、『プリティ・ウーマン』が1990年に公開され、話題になりました

手塚治虫の『鉄腕アトム』も、天馬博士の愛するひとり息子・トビオが交通事故で死んでしまい、博士はその悲しみを埋め合わせる目的で、トビオそっくりの少年型ロボットであるアトムを作ったことが物語の始まりです。
『ピノキオ』も、木工職人ゼペットが、孤独を癒やすために作った木の人形に、「本当の子供になって欲しい」と星に願いをかけ、それを受けたブルー・フェアリーが命を吹き込んで誕生しました。

人形には、寂しさを癒やし、心に安心感を与える効果があります。
幼児は、お気に入りのぬいぐるみを抱いて眠り、かわいい人形はおままごとの相手役であり、最初の友人になります。
脳科学の研究から、ぬいぐるみや人形を愛する心理が、脳内物質のオキシトシンを分泌させ、安心感と癒やしが得られるとする、「ぬいぐるみセラピー」なる研究報告があります。
ぬいぐるみや人形は、私達が思っている以上に必要な存在であり、大切にすべきものなのかも知れません。

私も、子供の頃、NHKの人形劇『ひょっこりひょうたん島』やジェリー・アンダーソンの特撮人形劇『サンダーバード』を観て育ちました。また、人形を少しずつ動かして撮影するストップモーション・アニメーションによる『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993年)や『コララインとボタンの魔女』(2009年)などの作品は、人形に本当に命が吹き込まれた感じで、映画の中でも特に好きな表現方法です。

親になってからは、子供と一緒にピクサーアニメ『トイストーリー』を観て感動し、子供を通して『ひな人形』、『シルバニアファミリー』、『ブライス』、『レゴ』、『テディベア』、などを知り、人形の表現の広がりと深さ、そしてその魅力を知りました。

人形制作が芸術作品の表現として確立する先駆けになったのは、ドイツの画家ハンス・ベルメールが、1934年に少女の関節人形の白黒写真10枚を納めた『人形』を、ドイツで自費出版したことから始まっています。
1965年に雑誌『新婦人』で、澁澤龍彦がベルメールの球体関節人形を紹介したのが、彼の作品が日本で広く知られるきっかけでした。古典的な日本人形の伝統とは別に、球体関節人形というジャンルが生まれることになります。

人形に関して、近年、日本におけるもう一つの潮流が生まれています。
それは、アニメやゲームのキャラクターを立体化するフィギュア文化の盛り上がりです。
フィギュア文化を支えているのは、原型師と呼ばれる人達の卓越した造形力です。
彼らの中からは、原型師の枠を越えてフャギュア造形作家として活躍する者も現れます。
現在は、単なるキャラクター商品に止まらず、現代アートの領域を担うまでに成長しています。
この流れを象徴する作品が、1997年に制作された村上隆『Ko²ちゃん(Project Ko²)』です。
ウェイトレス姿の美少女をモチーフにした等身大フィギャア作品です。
オタク文化を現代アートまで昇華させた先駆的な立体作品です。

人間と人形の歴史的関わり、現代アートにつながる球体関節人形の系譜、キャラクターのフィギュア化とアートへの昇華など、人形に関した考察はなかなか面白いものです。

人形作家が人型の人形を造形する行為は、小さくとも一つの世界を創造し、その登場人物を生み出す行為なのです。生み出された人形は、作家のイメージ世界の具現化であり、登場人物として物語を語る存在になります。
しかし、その制作過程は簡単ではありません。緻密で広範囲に及ぶ工芸技術の集積と鍛錬を必要とします。粘土造形、塗装、染色、和裁、洋裁、革細工、金属加工、樹脂加工、ガラス加工など、これらの技術に加え、当然、作家の創造力、イメージ力、そしてオリジナル作品としての独創性が問われます。

私は、田中雅子さんの人形達と出会い、その人形のもつ存在感、人形作家としての技術の確かさ、そして彼女の独特な世界観に魅了された一人です。彼女の人形達を通して、人形を観てその世界観に浸る楽しみを知りました。

田中雅子さんが人形作家として今後ますます活躍されることを心から期待しています。
以下、彼女の略歴と代表作品等を紹介させてもらいます。
興味を持たれた方は、是非、展覧会場で実物の人形達に会っていただくことをお薦めします。
観ていただければ、私が魅了された理由が理解していただけると思います。

人形作家 田中雅子 略歴

2010年 粧順人形教室にて球体関節人形を学ぶ
2012年 2012創作和人形展 ギャラリーぶんかとう (福岡) 以後毎年参加
2014年 バーリーシェル・ドールコンテストinみえ 津市教育委員会教育長賞
2016年 第1回「人・形」展 の公募展 ぼらん・どぉる賞
第11回「人・形」展 丸善ギャラリー (東京) 以降2022年まで毎年参加
2017年 人形シンポリオンMIDOW展2017「赤い靴」三上りあん賞
2018年 田中雅子人形教室を開く
2019年 ドオル・コレクションKanazawa2019 (石川)
2020年 第14回 和の創作人形展「倉敷ひいな~雛遊~展」(岡山) 以降2024年まで毎年参加
2021年 第1回 球体関節人形~無我の会~展 ノリタケの森ギャラリー (愛知)
2022年 創作人形 粧順×十二人展 GALLERY偏西風 (大阪)
はちす・田中雅子人形展-語りかれる人形たち-GALLERY芽楽 (愛知)
2023年 クラフトアート創作人形展 HELLO!DOLLS selection 阪急梅田本店 (大阪)
第2回 球体関節人形~無我の会~展 ノリタケの森ギャラリー (愛知)
はちす・田中雅子人形展-人形異界語り 魔界はこんなにも、あったかい-GALLERY芽楽 (愛知)
2024年 ドオル・コレクションKanazawa2024 (石川)
第19回「人・形」展 丸善ギャラリー (東京)
夢見るギニョール展-夜の動物園-(大阪)
2025年 第19回 和みの創作人形 倉敷ひいな展(岡山)
第3回 創作人形~無我の会~展 ノリタケの森ギャラリー(愛知)
創作洋人形コレクション ぎゃらりーぶんかとう(福岡)

 

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