「Japanese garden」シリーズ
何に美を感じるかは、人それぞれの美意識によって違います。
私は汚れた壁や錆びた鉄の扉、雑草のシルエット、横断歩道の白線のひび割れなどに不思議な魅力を感じ、そこに美を見いだします。
ヨーロッパの風景、仏像、都市の記憶、KARUMA、想い、雨月などをテーマに制作制作を続けてきましたが、最後にたどり着いたのは、自己の美意識と記憶をベースにした半具象半抽象の絵画表現の領域でした。
制作理念として核に位置づけたのは、日本人の日本庭園に対する思想です。
「精神性の高い境地を自然の木々や石などを組み合わせ、時の流れの助けを借りて完成させる創造行為」、これこそ日本人の美意識が結実したものだと思います。
私は木々や石を抽象的な色や形に代え、時の流れをアクションペインティング的な技法を取り入れることで表現する試みを続けています。
作品のタイトルは「Japanese garden」としました。
植物のシルエットは素材として使いますが、それは植物の写生では無く、画面を構成する一つの要素に過ぎません。コンクリートの壁に映った影のような存在なのです。具象と抽象の境界領域により、観る人の想像力と感性に訴える絵を描きたいと思っています。
制作過程においては、禅の思想を体現するためにアクションペインティングの手法を取り入れ、今を生きる証として、その瞬間だけの表現にこだわっています。
一点一点、そのときの筆のタッチ、色の重なり具合、自分の精神状態が反映され、一つとして同じ絵は描けません。究極のアナログ表現を極めていきたいと思っています。
制作中には何度となく、目を閉じ、精神を集中させ、呼吸を整え、時が来るのを待つことがあります。「Japanese garden」シリーズに取り組むようになってから、自分だけの力で描くというのではなく、天の力を借りて描かせてもらうという感覚を持つようになりました。
初期の頃は、副題もつけていましたが、それすら余分な説明でしかないと思い、基本すべての作品を「Japanese garden」のタイトルだけにしています。
創作活動において自分自身で条件として課していることがあります。それは、描く度に必ず新しい試みを取り入れる。今までに無い表現にチャレンジするということです。今までに使ったことの無い配色であったり、筆のタッチであったり、失敗を恐れずチャレンジしてみて、やってみてから考えるようにしています。
たかが、限られた紙の上に筆で絵の具を塗り重ねていく行為ではありますが、シンプルな行為であるだけに、なかなか完成された美を表現することは難しく、画道を極めることはできません。
「Japanese garden」は私のライフワークとなりました。命ある限り描き続け、画道を極めたいと思っています。